2020年11月7日土曜日

Sakaide

少し以前の話です。



橋を越えた港町は無残かな。

風待ち港時代の妓楼建築は、家主を失い朽ちるままに。屋根に大穴が開き役目を果たさぬアーケード街は、そのほぼすべてが廃墟で人の気配もない。

そんな街にある昭和初期にかけて建てられた洋館には、20数体の生身の人形たちが在世しております。旧厠の扉を引けば骨格標本のような青年が横たわり、球体の少女は押し入れの中、モザイク床の洋間には機械仕掛けの少年もピグマリオニスム・ナルシシズムも。そして階段上の空間に「天使-澁澤龍彦に捧ぐ」もいらっしゃる。(ちなみに幼少期の澁澤龍彦は、我が街川越で育ってます)

アクリルで囲われもせず(一部例外)、数センチの距離で肌の質感までリアルに分かる。洋館には学芸員(?)の不思議な女性とボクらだけ。新宿・花園神社の喧騒など、記憶の彼方にも無くなってました。

Nina Simoneが微音で流れてます。
たまたま「Ain't Got No, I Got Life」。

















2 件のコメント:

彦十 さんのコメント...

なごり雪様

なんと!
怪しの世界が坂出に残っていたとは。
私も実物の前に立ち、
そんな世界に半分生きておられるような事務員さんに話しかけてみたい。

昔は浅草や上野、隅田川を超えた辺りにあると思っていたけど、
今は寂れた地方都市にあるんだね。
不自由な今は、なごり雪様の写真であの世界を堪能致しまする。

なごり雪 さんのコメント...

彦十どの

この館の人形よりも、その学芸員の女性の方に惹きつけられてしまいました。(笑)
それにしてもこの街とシモンさんは似合ってました。
繁栄が去って幾歳月、もう戻ることの無い時代の遺跡があちこちにありましたよ。

彦ちゃん、知らない街を行く旅は背筋も寒くなるし悲しみもあるけど、
今は会うこともできない人と交信できるような気もします。

良かったよ。