2022年11月29日火曜日

Negoro

もう四半世紀も前のこと、器関係の雑誌で夏目 有彦氏を知りました。それまで本漆器イコール家庭用ではなく、茶懐石や日本料理店用の器であるものと思っていました。ところがその頁の氏の器は違ってましてね、武骨で荒々しく、野武士(見たこと無いけど)の様な漢の漆器だったのです。猪肉でも芋の煮っころがしでも大盛りの糧御飯でも、どーんと包み込んでくれるような豪快さと懐の深さを印象として受けましてね。それと氏の風格溢れた風貌と皮膚と漆が一体化した掌、それ以来、木曽の夏目 有彦・作の器が気になって気になってしかたがない。しかし若かったボクには入手する手段も資金もありませんでした。2000年に62歳で夏目氏没する。






四半世紀が過ぎ、ご縁で夏目 有彦・作の根来大鉢(径42cm)とつながりました。茶道具商で出会ったそれは、個展のリーフレットとともに真綿と包まれて桐箱に。長い時をどこかで眠っていたような美品です。

思わず抱きしめましたよ。



2022年11月27日日曜日

Light of Meiji

今朝、夜明け前から赤坂の豊川稲荷さんと築地の波除稲荷さん近辺をウォーキングする。家内安全・商売繁盛もろもろ、いつもわが家を守ってくださります。んで、ボクなりの信仰心から感謝を込めまして定期のお参りを。
もう東京もすっかり紅葉も終わっているだろうと考えていたら、最後の最後に黄色いイチョウが落葉の真っ盛りでございました。波除さんで落ち葉に隠れた銀杏を踏みつけてしまい、帰路での車中がヤバい状態に臭いを放っておりました。今もまだ臭い。


昨夜から階段の照明を冬用に暖色で。30数年前に田舎の骨董屋で購入した品です。金赤縁にサンドブラストで桐に鳳凰をあしらった明治期の電笠なのね。毎年これに替えるとき、師走(冬)の到来を感じます。

Worth

最近、ボトラーズのモルトを購入しようとしてもなかなか買えないんだよなぁ。マッカランを筆頭に、アードベッグもボウモアもラフロイグも。オフィシャルはあるのだが、ニューリリースが少なくなっている上に、ボトラーズやオフィシャルでも限定品は入手が難しくなってるのね。なのに発売日が過ぎるとオークションで高額出品されてる現実。んんん、、、分からなくもないが、ボクらは呑むことに興味があるので、利殖利用アイテムとして購入する人口が増えると困ってしまいます。コロナ禍以降、ロレックス化しちゃってねぇか。


んで、やっとこさアードベッグ コミッティーストア限定のハイパーノヴァをご購入。でも規定でお一人様1ボトル限定ではねぇ。いつもなら複数購入して、お気に入りは後々用に取っておくのだが。もったいなくてなかなか開栓しづらいぞ。こっち(スコッチ)も適正価格から怪しい方向に行っちゃってる気がする。建前上は転売禁止でも、ヤフオクには倍価で大量出品されてるし。そして数年も寝かせりゃまたその倍だもの、変なの。

箱代¥550っつーのも変じゃね?さすが親会社がLVMH(ルイ・ヴィトン)!




2022年11月25日金曜日

Akumu

酒癖の悪い同級生と高級クラブに飲みに行き、その同級生がワイン代の支払いで店とトラブルを起こして、旧知のママやホステスさんに平謝りする悪夢で目が覚めた。実生活ではそんな高級クラブなど行ったことなど無ぇーし、その同級生とは二十歳の同窓会で飲んだ以来会ったことも無ぇーし。ただその同窓会で(彼が呑み過ぎで)揉めたヤツですが。「小野ちゃんが悪いワケではないから気にしちゃダメよ」と手土産までくださったクラブのママは野宮 真貴でした。

目が覚めたらセネガルとクェートのワールドカップが大きい音声で流れっぱなしのボクの書斎で、バクバクの血流と強い暖房での汗っぽい身体を落ち着かせるのに多少の時間を。

作りっ話じゃないよ。たった今のコト。
夢は良き夢でも悪夢でもすぐに忘れてしまうので、記憶鮮明なうちに書き留めました。

んで、写真無し。

2022年11月23日水曜日

I’m 63 years old.

交差点の信号待ちで止まった場所は、たまたま小中学校の同級生の自宅前でした。フと見上げたら定年を迎えたであろう同級生がベランダで洗濯物を取り込んでいた。中学を卒業して以来会うことも無かった同級生、在学中も付き合いは無かったけど、その半世紀後の元気な姿になんでだか安堵したりして。元気でなにより。
親を見送るヤツもいれば再婚をしたばかりのヤツもいる。今日も長女と買い物に行くと、孫を引き連れたヤツとも遭遇するし。63歳、まだ当分は自分たちの終活は遠いかな。六十にして耳順い、六十にして立つ、肉体はガタガタだけど。




つい最近に入手した昭和初期のノリタケ製の皿と、戦後間もなくの頃のブルーウィローのデミタスなのね。どちらもデッドストックです。大した品ではございませんが、この類は出会いの度に購入してしまい、ついつい食器棚か倉庫に補充してしまいます。断捨離どこ吹く風。
美術絵葉書は1930年代当時の品で、東郷青児氏の初期作品のです。

2022年11月22日火曜日

2023 Sample

アっという間に11月も後半に。コロナも落ち着いたんだか悪化の方向なんだか分かりません。けっきょく今年もコロナに翻弄された一年でしたが、来年こそはと、来年こそはと、願いを込めてイラストレーターD氏とカレンダーを製作中でございます。
2022も残り少なくなりました。お客様に一年の感謝と次の一年の日々の笑顔を願いまして、こんなCDサイズのカレンダーでございます。ヘヘ、片頬で笑ってください。

ご贔屓様やブログやインスタ繋がりの方々の分は確保してるつもりですが、ご存知のように隅から隅まで行き届けないボクです。配布時は告知いたしますが、去年は追加分も含め3日で終了しましたのでお早めにお願いいたします。またお取り寄せでのお客さまには、荷箱の中か別便にて発送させていただきます。

写真はカラーサンプルからの2023のMarch&November。実際はもっと発色が良いです。






2022年11月19日土曜日

Saturday night

30代からお世話になっていた鍼灸師がコロナ禍以降廃業してしまった。パンツ一枚になって全身に和鍼を打つのだが、施術を受けると受けないとでは後々の身体の快復速度が違ってたからね。元々は主の父親が寫眞師とのことで、施術場は旧寫眞館らしい砲弾窓のある古い洋館でね。ステレオ(?)から流れるSP盤クラシック音楽が妙に心地よい空間であったのだ。針を打たれながらのドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」第二楽章などが流れてごらん、「このまま昇天してもいいや」ってな気分になるから。ちなみに隣の駐車場は戦前の伝染病専門の病院跡で、全盲の先生も常に霊の存在を感じていたとか。それほど奇妙な電磁場で、ステンレス製と金製や白金(プラチナ)製の和鍼を駆使しての施術は、あれからあれこれ探せど代わるモノはございません。困ってます、ハイ。

今宵も呑みます。

基本、ボクは食中でもウイスキー派です。それがですね、ワインや日本酒に造詣の深い料理人は多いけど、ある程度の料理店でもウイスキーは「品揃えとして置いているだけ」ってぇのが本音でほとんど。そして『山崎』『イチローズ』が大半で、先日の割烹店でも「料理の邪魔にならないように」と、ソムリエに薦められたのは『マッカラン12』だもの。上記の優等生モルトも良いのだけれど、違うんだよなぁ(分かってネェなぁ)。それだったらブレンデッドの『オールドパー』を選択しますよ。ボク的には優等生なモルトより、ピートの利いた方が好みなのだが。「料理の邪魔に・・・」と言うけれど、『アードベッグ』の切れの良いクレゾール香で、料理ごと口中をリフレッシュしたいものです。

なにか間違っとるかね?



んで、今週の晩酌用はコレね。ポートアスケイグ8です。アードベッグに負けず劣らず香り立つ。少々潮辛い。長きにわたりブームな高額国産モルトより、適正価格なスコッチに面白さがあるのになぁ。平治煎餅を肴に夜が更けてゆきます。明日は定休日です。


2022年11月15日火曜日

Tsukeba

新宿伊勢丹近辺はケヤキで、麹町から皇居まではスズカケノキ(プラタナス)の落葉で好い感じに晩秋風情です。少し風もあり、落ち葉はストップモーションで円を描きます。

渋谷での用事を済ませてから、昼食と食材の買い出しで銀座に戻ることに。想像していたより外国人の多い銀座、交差点で佇んでる集団はその類で、皆スマホ片手にキョロキョロと。んなワケで、昼飯難民になっちゃった。友人のfbに刺激され、無性に牡蠣蕎麦が食いたくなって『名月庵田中屋』に向かえど大行列、とてもじゃないが最後尾だと一時間は待つこととなる。思い立って交詢社ビルの『寿司幸』に問い合わせたら、「一人なら大丈夫です」とのご返答を。困ったときに神降臨、すぐさま最後尾を棄てて交詢社に走る。

やっとこさ、カウンターの隅っこに。隣席はご夫婦だかパートナーだか欧米人の男女がポン酒で「おまかせ」を食っとる。口に運ぶと「オイスィ~」を連発で、板前は板前で流ちょうな英語(笑)で「センキゥ」と。
街も少しづつ以前の姿に戻ってるのかな。この空白の数年間は何だったろうね、神さま。



2022年11月13日日曜日

Quality of Life

餡かけの豆腐を終末の土曜日だけやっとります。AM11:00~PM2:00で御座います。九条ネギは好きなだけどうぞ。


たまには仕事の話。「安物買いの銭失い」ってことが嫌いです。以前書いた飛龍頭(がんもどき)用の百合根もそうだけど、「安かったから」とか「少し小さいからお得だよ」と豊洲の仲買O氏が持ってきたら要注意。大概がろくなモノではなく、けっきょくは利用できる部分が少ないだけなのだ。それが値段が張っても大きく優品なら量も取れて無駄が無い。
コレもそうなのだが、飛龍頭のつなぎには普通「山芋パウダー」使用がほとんどで、フリーズドライの山芋ペーストさえ少数派の時代らしい。(書くにあたって問い合わせた大豆商社談)わが家は生の「丹波つくね芋」なのだが、飛龍頭の色や歩留まりが大変よろしいのだよ。大和芋とは値段は雲泥の差だけど、仕上がりの良さは味の良さにつながり、作り手の満足感ハンパないのであります。

っつーか、生芋をつなぎで使わないことが当たり前だったとは。すっかりガラパゴス化してる自分に驚いた。






2022年11月12日土曜日

November

11月も半ばになったのに、一昨日も昨日も蚊に刺されたボクです。猛暑の夏には出没しなくなった蚊なのに、それが晩秋になってから吸血に勤しむ。いずれ季語は夏から秋に。



『まるに抱き柏』謹製の亥の子餅と御火焚饅頭があるので、こんな瀬戸の加藤某の古典な茶碗で茶を点てる。菓子器はお気に入り初代・小川長樂の赤楽宝珠文皿と輪島の漆器で。季節は磁器モノから泥モノになりました。カミさんと二人きりの土曜の夜、掌にすっぽり収まる茶碗の温かさよ。皆に不思議がられますが、冬がいちばん好きです。はやく来い来い。



2022年11月8日火曜日

Hana Tsubaki



60~70年代限定の資生堂ノベルティマニアです。
古道具屋でこんなスタンドミラーを購入しました。とーぜん箱入りの未使用品ですね。記憶のはるか彼方にあったスタンドミラーです。半世紀から昔、叔母(現在70代後半)の独身時代の部屋にあったヤツと同じのです。これは昭和48年度花椿会ゴールドクラス記念品 スタンドミラーですが、資生堂販売店のミラーはそれ以前から皆コレだったと思います。
得意げにカミさんに「これ憶えてるか?」って話を振ったら、「(そんな物)いらないよ」とバッサリ会話を切られた。

誰がオマエになどやるものか、、、ヶ!!!

      


2022年11月6日日曜日

Hōjō

今年は柿が大豊作で、小さい方の渋柿は大量にダークラムとウォッカに漬けました。業務用の厚手90リットルゴミ用袋に満杯で各2袋ずつ。井戸端の大きい富有柿も、甘味の増す落葉時期に向けスタンバイ中です。毎年のコト、店でお客さまに配ると喜ばれますので。

ところが今年は不思議な出来事があってね。昨日も見知らぬ熟年男性が店に来て、「あの柿だけど、不要だったら私たちで処分するよ、、、」と。んで、「もちろん無料でいいよ」とも。それ以前にも「あの柿くれないかな?」と女性グループや数組の老夫婦に問われたのだが。そのたび丁重に「お客さまに配る柿なもので、、、、、」と断ってはいるのですが。共通点は、まーーーったく存じ上げない人たちなのであります。

オレには出来ないなぁ、そんなことを訊くコト自体。理解できネェぞ!

ご贔屓様のベルルッティ住職に、たーくさんの珈琲豆を頂戴したので早速淹れる。秋らしく朱地に白菊のカップで、ケーク皿にはちょうど取り寄せた塩五の『松葉』を。バックスタンプから昭和40年代初期のセットです。





2022年11月3日木曜日

Japonica

車イスを押して飯を食うのはやはり場所を選びます。昨今はバリアフリー化されてるとは言え、やはり出かける前にリサーチはしておかないとね。そこへいくと東京は楽でよろしい。とくに百貨店は配慮が行き届いてますもんね。
月一の母との散歩、今回は銀座の松屋百貨店の『築地 宮川本廛』で昼食を。車イスのまま食事ができるのもありがたいからね。そしてボクも愉しみたいし。
母が言う「とても上品で、ここは美味しい」と。

ボクもそう思う。




2022年11月1日火曜日

Nukasu

45年間、豆腐製造業を営んできましたが、自身の代で豆腐屋は終わらせようと考えております。まぁ行けるところまでは行くつもりですが、還暦を過ぎると何が起きるか分かりませんからね。いずれ伝説に。(ナニをぬかす)
ところで身体が動ける間にもうひとつの表現をしてみたく、ただ今空間(スペース)を探しております。この街でリノベーション可の物件がありましたらお教えください。路地奥だろうが廃屋だろうが、古い洋服ダンスの裏扉が入り口の様な物件が希望です。だって、普通ではないこのボクが考えてることだもの。


久しぶりに漆作家・若林 幸恵さんのエキシビションにて大椀を二つ入手する。椀縁は丸とスクエアな形状違いでしたので、どちらと選べずにどちらとも手中にいたしました。刳りモノの椀は、見ての通り太古の神器に通ずるようなフォルムです。ギャラリーで対座したとき、托鉢僧の鉄鉢にも、また円空仏の蓮台にも重なってしまいましてね。この神々しさは椀(器)なのかオブジェなのか、よぅ分からんので当分オブジェで。
若林 幸恵女史、例えるなら『リボンの騎士』のサファイアでございます。




Le Coq


週の初めに友人たちと会食をしたのだけれど、レストランは代官山でしたので帰宅は深夜。やはり昔のように無理は利きません。身体の変調は、とうとうこの一週間引きずってしまいました。一緒した同世代の料理人も膝が悪いみたいで、足を引きずりながら毎朝の豊洲通いらしい。最近はそんな会話も多いですねぇ。歳は取りたく無ぇもんだ。

そんな彼の知人の店で、4人での漢フレンチを。ハロウィンで賑やかな渋谷の隣ですが、代官山の夜は静寂。とくにこの店は大人御用達、隣席は偶然前回と同じ70代のご夫婦でありました。奥さまのお召し物やセットされた御髪とご主人の気品、松濤辺りにお住まいかなと想像すれば南平台とのことありました。江戸の貧乏長屋住まい風体のボクら4人とは、ソフィスティケートさはどー見ても違うのよ。生まれ変わったら、今度はそっちに属したい。(ヘヘヘ)

穏やかな時間が流れます。